彼女は「由衣」は自分が名前を呼ばなかったことで部屋を出て行ったきり戻ってこなかった

母親の里香子も珍しく狼狽えていた


 (…両親も公認の仲だったのか?…だったら…)


なぜ彼女のことだけぽっかりと穴が開いたように忘れてしまったのか


 「立夏様?お気に召しませんでしたか?」

 「え?あ、いや?美味しいよ?」

 「そうですか?箸が止まってますから…」

 「うん、本当に…少し考え事してただけだしさ」


「篠田さんに悪いね」と言って夕食を食べ始めた立夏