抱き締められ、背中をさすられながら、徐々にあたしは落ち着きを取り戻した。


そして状況を理解するにつれ、なのにこの腕を振り払えない自分がいる。



「諏訪とかみんながいきなり俺んとこ来てさ。
奈々が携帯の電源切ってて、だから嫌な予感がするから、って。」


雷の音は空を唸らせているのに、それよりずっと、耳に触れる声色は柔らかいものだ。


だからまた、安心させられる。



「探してほしい、って言われたんだ。」


勇介は、あたしを抱き締める腕の力を強めた。



「俺、何の確証もないけど、奈々はきっとまだ学校にいると思ってた。
雷怖がって震えてる気がしたから、早くこうしてあげたかった。」


「…どうしてっ…」


どうしてこの人だけは、そんなことがわかるのだろう。


涙が溢れて、言葉にすらならない。



「樹里ちゃんもさゆちゃんも、心配してたよ。」


みんなが必死であたしを探すために駆け回っていたことは、想像に易い。


だから嬉しさとか申し訳なさとか、そんな色んなものが混じり合い、もうぐちゃぐちゃだった。



「…葛城は、探さないって。」


勇介は、少し堪えるように声を絞る。



「俺にはどこにいるのかわかんないし、仮に探し出せたとしても、中途半端なことしか出来ないから、って。」