バッグだけを手に取るあたしに彼女は、「サボるなら付き合おうか?」なんて言ってくれたが、でもそれは断った。


そして後のことは適当に任せ、あたしはそのまま帰るべく教室を出た。


でも、窓の外は豪雨のような雨。


生憎傘は持ち合わせてはいないし、さすがにこれじゃあ濡れて帰るという選択肢も無理だろうと思ってしまう。


学校の中では、どこにいても誰かと会いそうで、だから誰にも見つからない場所なんて、他に知らなかった。


結局、あたしが足を運んだのは、第4校舎だった。


あれ以来ここに足を踏み入れることなんてなかったけど、でも来てみれば、思い出すことばかりだ。


そのどれも、勇介と積み重ねたもの。


少し分厚い壁のおかげで雨音は薄れ、だけども静寂が孤独にさせる。


携帯の電源を切り、あたしは階段でうずくまった。


ヒロト、樹里、スッチ、沙雪、と頭の中に浮かぶのは、彼らのこと。


答えを出そうと決めて、でもまず何から考えれば良いのかなんてわかるはずもない。


弱い自分と向き合うことには勇気が必要で、だからってそれは、簡単に、蛇口をひねるように溢れ出て来るようなものでもないのだ。


でも、逃げることはもう止めようと思った。


ただ少しだけ、今は疲れてしまって、だから眠りに落ちたかったんだ。


それがこの、勇介との思い出ばかりの場所だというのが、少し悲しかったのだけれど。