「まぁでも、お互い友達には戻ってたけど、別れてるし?
悪いことじゃないけど、高校入ってすぐ、アイツは樹里の友達好きになっちゃってね。」


それが、あたしだ。


ならばあたしは、その頃からずっと、樹里を無意識のうちに傷つける存在だったのかもしれない。


だって彼女はいつも、何かを紛らわすように、大して好きでもない男と付き合っていたのだから。



「でも、奈々ちゃんが自分を責める必要なんてないよ。
好きになったのはヒロトで、見守ることを選んだのは樹里なんだから。」


それは、この人だから言うことが出来た台詞なのかもしれない。


今もずっと、一番近くで沙雪を支えているスッチだから。


だから少しだけ救われた気がして、あたしは堪えるように肩を震わせた。



「俺は別れろなんて言わないし、それはヒロトと奈々ちゃんが答えを出すべきだと思う。」


この人は、優しくて、そしてやっぱり傍観者の位置から動くことはない。


“みんなで仲良く”が好きで、それを理想論だと言いながらも、ちゃんと築こうとしている。


いつも誰かを責めるでもなく、みんなの気持ちを大切にしていた。


だからこそ、動いたりはしないのだろうけど。



「それにやっぱ、土屋クンとももう一度ちゃんと話した方が良いと思う。」


スッチはお兄ちゃんのような顔を向ける。



「俺もあの時は頭に血がのぼってたけど、今は樹里が言うように、何か理由があったんじゃないかって思うんだ。
それにやっぱ、これからヒロトとどうなったとしても、土屋クンのことはちゃんと解決しなきゃ前に進めないと思うよ。」


奈々ちゃん自身がね。


と言う、彼のしっかりとした瞳を前に、言葉が出なかった。


だって頭では言われていることがわかっていても、拒絶されるのは今も怖いから。