「奈々ちゃん?!」


遅れてやってきたお母さんは、あたしを見てひどく驚いた顔をしていた。


それもそのはずだろう、だって樹里とヒロトが写るアルバムを手に、あたしは大粒の涙を流していたのだから。



「…えっ、何、どういう…」


「ババア、てめぇ奈々に何言ったんだよ!」


責めるべきは、彼女ではない。


だってお母さんは、ただ知らなかっただけなのだから。



「出てけよ!」


だけどもさすがに状況を察したらしい彼女は、ごめんね、と小さく言い、部屋の扉を閉めた。


再び訪れた沈黙の中で、ヒロトの方が唇を噛み締める。



「お前が何を聞いたか知らねぇけど、樹里とは終わってんだって!」


「じゃあ何でこんなもん、後生大事に持ってんのよ!」


「聞けって!」


「嫌だよ、触んないで!」


必死そうなヒロトは、あたしをどうしたいのだろう。


互いに昔付き合っていた人がいて、だからそんなことを気にしているわけではない。


ただ、隠されていたこと、そしてきっとまだ何かを隠しているのだろう事が、不安なだけ。



「樹里とはホントにもう、何でもねぇんだって!」


耳を塞いだのは、あたしの方だった。


言い訳なんて、聞けば聞くほど知らなくて良いことに気付かされる。



「…じゃあ、何でっ…」