この部屋は乱雑としているはずなのに、なのに誤魔化すための会話の糸口になるようなものは、何もない。


スッチはヒロトを睨んでいて、空気がピリピリとしているのがわかる。



「別に今更関係ねぇよ。」


やっぱり何のことを言っているのかわからない言葉だった。


ただ、みんながいる前で聞くべきではない気がした。



「なら捨てれば?」


スッチが言い、ヒロトは舌打ちを混じらせる。


そしてアルバムは、無造作にゴミ箱へと投げ捨てられた。


でも彼の瞳には、まだ迷いがある。


そんなに大切な思い出とは、一体何なのだろう。



「どうせヤンキーみたいな写真ばっかなんでしょ。」


あたしがわざとのように言うと、ヒロトは黙って煙草を消した。


ジュッ、という音が、沈黙の中に響く。



「やめようぜ、こんな話。」


だけども重くなった空気は拭えない。


一度あたし達の顔を確認し、笑って立ち上がったのはスッチだった。



「さゆ、帰ろう。
あんま遅くなる前に、俺送ってくから。」


彼女はこくりと頷いた。


こんな状態であたしとヒロトをふたりきりにしないでほしい。


なのにそんな願いも虚しく、沙雪とスッチは部屋を出る。


また訪れたのは、沈黙だった。