そして、送るよ、と彼は付け加える。


今までシンちゃんが、それをトキくんに頼んだことなんて、一度もなかったのに。



「…どうしてっ…」


どうして教えてくれないの?


涙の溜まった瞳で見上げると、トキくんは優しい目をしていた。



「そんなとこ座ってたら、体冷えるよ。」


そんな言葉に、あたしはぐっと唇を噛み締める。



「トキくんだって何か知ってるんでしょ!
あたしは何で生まれたの?!」


「奈々ちゃんは、望まれたから生まれたんだよ。
それ以上でも以下でもない。」


それは決して、あたしの求めている答えではなかった。


だからまた泣き崩れて、どうすることも出来なくなる。


あたしはまだ“大人”じゃなくて、そしてこんな状態で出生の秘密を聞ける余裕はないことくらい、わかってる。


でも、ひた隠しにされていることが、何故だか悲しかった。


ヒロトに言えないことばかりが増えていく。


それもまた罪悪感に繋がって、トキくんの胸の中で声を上げて泣いた。