まるで話題を変えるように、シンちゃんは問うてくる。


でも、こんな状態で何を聞けというのだろう。


彼があたしに優しくする“責任”とは、一体何だというのだろう。



「ねぇ、何で嘘つくのよ!」


「…は?」


「あたしの父親って一体誰なのよ!!」


堰を切ったように体を揺らして声を荒げるあたしに、シンちゃんはただ、戸惑うように瞳を揺らしていた。


こんな風に聞いたことなんて、今まで一度としてなかった。


でも、頭の中はまとまらなくて、だから目の前の彼を責めることしか出来ない。



「落ち着けよ!
つーかいきなり何の話してんだよ!」


制止するように、シンちゃんは言う。


勇介のことで泣いて、ヒロトと付き合っていると言いながら、父親のことを聞く。


そんなめちゃくちゃなあたしに、彼はひどく悲しげな瞳を向けた。



「とりあえず、何か飲み物取って来てやっから。」


「逃げないでよ!」


言ったのに、それが彼まで届くことはない。


苦しくて、苦しくて、ただ涙は止め処なく溢れる。


シンちゃんはそんなあたしを見るでもなく、再び扉の向こうへと消えてしまう。


それはつまり、知ることが許されないということなのだろうか。


入れ替わるように入ってきたのは、トキくんだった。



「勇介くん、もう帰ったよ。」