ママを避けたつもりはないけど、それでも顔を合わせたくなくて、そのままシンちゃんの店に来てしまった。


扉を開ければいつものように、まずトキくんが笑顔で迎えてくれる。


それに曖昧に笑いながらカウンターに向かえば、咥え煙草の彼の姿もいつも通り。



「何だよ、こんな時間に。
ママと喧嘩でもしたのか?」


シンちゃんは、そう言いながらアルコールを注いでくれた。


思い出したのはあの写真で、この人は一体何を隠しているのだろうと思う。


聞きたくて、でも聞けなくて、言葉に詰まるような顔をしたあたしを見て彼は、眉を寄せた。



「ねぇ、聞きたいことがあるの。」


「ん?」


切り出したのはあたしなのに、今更心臓はすごい速さで脈を刻み始めた。


あのね、と言おうとした時、だけどもそれを遮ったのは、あたしの後ろで響いた、扉の開く音。


そちらを見て一瞬にして険しい顔になったシンちゃんを見て、あたしも恐る恐るのように顔を向ける。


嘘だと思いたかった。



「…何、で…」


女の子と腕を組んでいる勇介が、先輩らしき人達と一緒に立っていた。



「奈々、奥行こうぜ。」


彼に聞こえるように、シンちゃんは言う。


そしてカウンターの中から無理やりあたしの腕を引いた。


勇介の視線は、確かにこちらを見ているはずだ。



「トキ、俺らちょっとあっちでイチャついてくっから。」