二度目に抱かれた時、その腕は先ほどとはまるで違うほどに優しかった。


だから、勇介のことを考える隙間もないほど満たして欲しいと願った。



「奈々、どこも行くなよ。」


落ちてくるのは、切なげな瞳。


ヒロトのことを、きっとあたしは好きになれると思う。


普段は見せない余裕のなさそうな顔も、あたしが乱した金色の短髪も、吐き出すその吐息でさえも。


この人の全てがあたしに向けられているのなら、それで良い。


互いに求めて、独占欲で縛りつけて、そんなのでも確かな証になるのなら、本望だ。





愛してほしかった。


あたしの傍からいなくならないでほしかった。


自分がこんなにも欲深く望む人間だなんて、知らなかったけど。


もう、傷つくことは怖いんだ。







「何だよ、あんま見んなっつーの。」


煙草を咥えたヒロトは、そう口を尖らせる。


照れてるみたいでやっぱり可愛くて、ベッドの中でまどろみながら、あたしは笑った。


笑ったら、ヒロトは立てている片膝に顔をうずめる。



「好きだから、見られたらハズい。」


本当に、らしくなくて笑ってしまう。


顔を隠しているつもりでも、耳まで真っ赤だ。



「ありがとね、ヒロト。」