痛みと吐息に顔を歪めるあたしを見て、ヒロトは自らのシャツを脱ぎ捨てた。


部屋は空色の所為で薄暗くなり、あたし達の行為を塗り潰してくれる。


制服はたくし上げられ、あらわになった肌に、また彼は歯形を残した。


まるで彼の方が、勇介の影を消したがっているかのようだ。


これで良かったのかどうかなんて、わからない。


それでももう、あの人のための涙なんか流したくなかったんだ。



「…ヒロト…」


名前を呼べば、彼の香りが近くなる。


だから、頭にも体にも、はっきりとヒロトが刻まれていく気がした。


僅かに聞こえ始めた雨音と、絡まる息遣い。


何度も何度もヒロトの名前を呼び、その腕を求めた。


あたしだけを見て、そして縋らせてくれるのなら、もう誰だって良かったのかもしれないけれど。


ヒロトの熱すぎる体の熱によって、溶かされてしまえば良いのにと思う。