ヒロトは手を引き、あたしはノブを握ったそのままに、扉を開けた。


彼の部屋の場所は知っている。


廊下の突き当たりの右側のドアに向かって、あたしの方が前を歩く。


心臓の鼓動は、少し早かった。



「相変わらず煙草臭い部屋。」


バッグを足元に置き、それが当然のように、あたしはベッドへと腰を降ろす。


ヒロトは制服の上着を脱ぎ、一度部屋を出た。


見渡す限り、一年の頃に来たのとほとんど変わりはなく、雑然としていて男の部屋そのものといった感じ。


でも、みんなで集まっていたあの頃とは違い、今はあたしだけ。


すぐに戻ってきた彼は、咥え煙草で片手にパックのジュース、もう片手にはガラスコップふたつを持つ。


外は少し曇りがちだった。



「ねぇ、エロ本発見しちゃった。」


テーブルに持っていたものを置き、彼は呆れるような顔で、あたしが見つけた週刊誌を奪う。


そして引き寄せられて、キスをされた。


そのままベッドに押し倒されて、落ちてくる瞳は僅かに揺れる。



「お前が煽ったんだから、後で文句言っても聞く気ねぇぞ?」


野性的な瞳は、ヒロトらしい。


だから何も考えられなくなるくらい、ぐちゃぐちゃにしてくれれば良いのにと、醜いことを思ってしまう。


微かに口元を緩めて見せれば、噛み付くようなキスが落とされた。


それは徐々に下に降り、鎖骨の辺りで動きが止まる。


ヒロトはそこに、引き千切るように歯形を立てた。


勇介がキスマークをつけた、あの場所だった。