体育祭も終わり、本当に勇介は、歩けないあたしをマンションの下まで送ってくれた。


肌は少しだけ汗ばんだようにベタつき、夕焼けの色に染められる。



「何かさ、あんま実感ないね。」


そう、勇介は苦笑いを向けた。


そしてあたしの指の先を絡め取るように持ち上げ、そこに唇を添える。



「でも、付き合ってるってことは、何やっても良いんだよね?」


わざとらしくいたずらっ子のように聞いた彼の言葉の意味がわからないほど、あたしは馬鹿ではないつもりだ。


少し恥ずかしくなって視線を外すと、また笑われた。



「まぁ何事も、奈々の足が治ってからだけど。」


あたしの髪の毛を梳いてから、唇が触れる。


彼は息を吐いて、あたしの肩口に頭をこてっと乗せた。



「俺、好きすぎてヤバいかも。」


まるで初々しいような顔で、勇介は言う。


彼もまた、少しばかり照れているような顔で、離れられなくなりそうだ。



「…あたしも、好き。」


言ってて消え入りそうだったけど。


でも、そんな呟きに、勇介は驚いたように顔を上げた。


そしてあたしの顔を見てから言葉の意味を確認し、柔らかく笑う。


互いの気持ちを言葉にして、顔を見わせて笑って、まるで中学生のような恋だったけど、でも確かに幸せだと感じていた。



「奈々?」