別に気を抜いていたからではないけど、その後出場した100メートル走で、あたしは足首をひねってしまう。


格好悪すぎる自分には相変わらずうんざりで、あたしの右足には、痛々しいばかりの包帯が巻かれた。


これはもしや、カレシのいない樹里の呪いなのかと思ってしまうが。



「アンタ、どんだけ鈍臭いのよ。」


「うるさいなぁ。」


彼女に肩を借りながら、口を尖らせてしまう。


そんな様子に気付いたらしい勇介が、こちらに近づいてきた。



「あ、勇介良いところに来てくれた!
ちょっとこの重いの、どうにかしてよ。」


樹里は、肩に寄り掛かるあたしに迷惑そうな顔をしている。



「つか、奈々どしたの?」


「ネンザだってさ。」


と、言って、「あとはよろしく。」と付け加え、さっさとどこかに行ってしまう。


本当に、嫌になるくらい薄情な女だ。


いや、単に気を使ってくれただけかもしれないけれど。



「大丈夫?」


「…うん。」


「歩けるの?」


やっぱり曖昧にしか笑えない。


本当はまだ、ずきずきと痛みを放っているが、でも勇介に頼るのははばかられる。


そんなあたしの様子に彼は、一度考えるように宙を仰ぎ、そして言う。



「今日とりあえず、俺送るから。」