あたしと樹里は眉を寄せて顔を見合わせるが、勇介が先を歩き出したので、その後ろに続いた。
そして体育館ではなく、向かったのは第4校舎。
どのみち先生の話を聞くだけの始業式なんてどうでも良かったし、何より勇介の言葉の方が気になったから。
「大地、もういないんだ。」
もう、いない?
「辞めたから、学校。」
外は夏の暑さが残っているはずなのに、やっぱりこの場所の空気はいつも冷たい。
なのに背中を伝ったのは、気持ちが悪くなるような一筋の汗。
もう二度とあたし達の前に顔を見せるなと、樹里があの日、吐き捨てた。
つまりはそれが、現実になったということだ。
「ねぇ、どういうこと?」
そう問うた彼女の声色は、少しばかり震えていたのかもしれない。
勇介は息を吐き、言葉を選ぶように話し出す。
「アイツだってさ、ホントは強い人間じゃないんだ。
だからさゆちゃんのことを想えば言うべきじゃないんだろうけど、でも大地は大地なりに傷ついてたんだよ。」
ひどいことをしていたのは彼自身だから、だから大地くんは決してその弱さを人には見せなかった。
でも確実に、それは心に深い傷となった。
樹里が責めたあの日、彼はただ悲しそうな瞳をしていたことを思い出す。
「大地はヒールに徹することを選んだ。
だから傍目から見れば逃げて辞めたように思うかもしれないけど、でも自分の存在でこれ以上さゆちゃんを苦しめたくなかったんだよ。」
同じ学校にいれば、例え別れてようと、姿を見れば思い出す傷がある。
だから沙雪を苦しめたくなくて、大地くんはこの場所から去ったのだ。
その選択は、どう受け止めるべきなのだろう。
そして体育館ではなく、向かったのは第4校舎。
どのみち先生の話を聞くだけの始業式なんてどうでも良かったし、何より勇介の言葉の方が気になったから。
「大地、もういないんだ。」
もう、いない?
「辞めたから、学校。」
外は夏の暑さが残っているはずなのに、やっぱりこの場所の空気はいつも冷たい。
なのに背中を伝ったのは、気持ちが悪くなるような一筋の汗。
もう二度とあたし達の前に顔を見せるなと、樹里があの日、吐き捨てた。
つまりはそれが、現実になったということだ。
「ねぇ、どういうこと?」
そう問うた彼女の声色は、少しばかり震えていたのかもしれない。
勇介は息を吐き、言葉を選ぶように話し出す。
「アイツだってさ、ホントは強い人間じゃないんだ。
だからさゆちゃんのことを想えば言うべきじゃないんだろうけど、でも大地は大地なりに傷ついてたんだよ。」
ひどいことをしていたのは彼自身だから、だから大地くんは決してその弱さを人には見せなかった。
でも確実に、それは心に深い傷となった。
樹里が責めたあの日、彼はただ悲しそうな瞳をしていたことを思い出す。
「大地はヒールに徹することを選んだ。
だから傍目から見れば逃げて辞めたように思うかもしれないけど、でも自分の存在でこれ以上さゆちゃんを苦しめたくなかったんだよ。」
同じ学校にいれば、例え別れてようと、姿を見れば思い出す傷がある。
だから沙雪を苦しめたくなくて、大地くんはこの場所から去ったのだ。
その選択は、どう受け止めるべきなのだろう。