スッチと樹里は同じ地元なので一緒に帰り、あたしと勇介は、真っ暗になった夜の街を歩く。


行き交う無数の人々は、悲しみなんて知らない目をしているように見えた。


もちろんそんなことなんてないことくらい分かっているけど、でも、ネオンの色が全てを覆っている気がする。


鳴ったのは、あたしの携帯だった。


そういえば、先ほど電話をするとかどうとか言っていたっけと思い出し、通話ボタンに親指を乗せる。



「シンちゃん、どうしたの?」


でも、聞こえたのは煙草を吸う吐息だけ。


一瞬の沈黙が、こんな時だからか余計に重たく感じてしまう。



『沙雪が子供堕ろしたって聞いたしさ。』


うん、とあたしは言った。


言葉はストレートだが、でも言いにくそうな様子は伝わる。


隣の勇介は、やっぱり空を仰ぎ、目を細めて流れ星を探していた。



『言っとくけど、お前のママはさ、子供産むことに一抹のためらいもなかったぜ?』


「うん、わかってる。」


『だからお前が生まれたのは、喜ばれたことなんだ。』


シンちゃんは心配してるようだけど、あたしは生まれてこなければ良かった、なんてことを考えたことは、一度もない。


でも、堕ろすという決断をした沙雪を責めるつもりだってないのだ。


あたしの出生と彼女の今回のことは別だと、ちゃんと頭でわかってるから。



「心配しなくても大丈夫だよ。
あたしだってそこまで子供じゃないっての。」


言ったのに、また沈黙が訪れた。



『勇介と、付き合ってんのか?』