勇介の言葉に、あたしは黙って頷いた。


これだけあれば、どれかひとつくらいは火の玉が残ってくれる気がするから。


そしたら沙雪は、また前のように馬鹿みたいな顔で笑ってくれるだろうか。


だからあたし達は、それを願うんだ。


みんなですっかり短くなってしまったろうそくを囲むようにしゃがみ、それぞれが手に持つ線香花火に火をつける。


ぱちぱちと可愛い花のような火花を散らすそれを、祈りにも似た気持ちで見つめ続けた。


一番に勇介の火の玉が落ち、続いてあたしのも落ちる。


樹里のものまで落ちた時、残ったのはスッチが持つ線香花火だった。



「あ!」


落ちずに消えたことが、まるで奇跡のようにも感じた。


樹里が泣きそうな顔をほころばせ、こんな状況なのに嬉しくなってしまうのだ。


それはもしかしたら、小さな小さな希望だったのかもしれない。


スッチは消えたそれを未だ見つめ続けたまま、切なそうな瞳を揺らした。



「終わったんだよ、もう。」


樹里はそんな彼の肩を、ぽんぽんと叩く。


勇介は星の輝く空を見上げ、目を細めていた。



「何見てんの?」


「流れ星、探してんの。」


彼の言葉にみんなが視線を上に持ち上げるが、どれほど見つめ続けていても、それが流れることはない。


こんな濁った世界では、きっと見つけられなかったのかもしれないけれど。


そんなことが、また少し悲しかった。