握り締めた沙雪の手は、血の気がないようにひどく冷たいものだった。


仮にも手術だったのだから当然なのかもしれないが、顔色も悪く、こんなに暑いのに掛け布団を肩まで被っている。


その痛みが、きっと命を消した代償なのだろう。


ドアを閉めているはずなのに、外からは赤ちゃんの泣き声が微かに聞こえる。


それが沙雪の嗚咽と混じり、耳に届くと悲しくなるばかりだ。



「…さゆ、もう死んだ方がマシだよっ…」


「そんなこと言っちゃダメ!」


樹里が制止した。



「アンタは赤ちゃんの分まで生きなきゃダメなの!!」


聞いていて、胸が張り裂けそうだった。


悲痛な沙雪の言葉も、必死な樹里の台詞も、いたたまれなくなってしまう。


後ろで涙を堪えていたママさんは、そっと部屋を出た。


どれだけ泣いても涙は止まらなくて、分け合うはずの悲しみは、余計に大きくなってしまう。


それから、看護師さんが入ってきたので、代わりにあたし達は部屋を出た。


ドアの前には、沙雪のママさんが佇んでいる。



「今日は経過観察のために一泊入院になるそうよ。」


あたしと樹里は涙を拭い、顔を見合わせた。



「うちら、いたら邪魔になんのかなぁ?」


彼女は不安そうに言い、あたしもそれに頷いた。


確かにずっと付いていたいとは思うけど、でも沙雪だってひとりになりたいのかもしれない。


なにより術後だし、安静にしなければいけないのはわかってる。