見捨てるわけなんてないじゃないか。


あたし達は3人だからこそ、“三姉妹”なのだ。


誰が抜けたって、それは成り立つことはないのだから。



「こんなおばさんの我が儘だけど、ふたりがあの子の傍にいてくれて、私は嬉しいの。」


沙雪と同じ顔で、彼女は涙ぐんでいた。


こんなにも良いお母さんに育てられた沙雪は、きっと幸せ者なのだろう。



「さゆんとこ、行こうよ。」


言ったあたしに、樹里が頷いた。


ママさんも頷いてくれ、あたし達は彼女の病室に向かう。


産院の中は、やっぱり妊婦さんや新生児の泣き声、人々の笑顔が零れていた。


どう見ても高校生のあたし達にはやっぱり似つかわしくない場所で、余計に沙雪の痛みを想像する。


3階の一室の扉の前に立ち、呼吸を落ち着けると、ママさんが一番先に部屋に入った。


きっと本来は、子供を産んだ人が入院する部屋なのだろう、至るところに淡い色が使われ、優しい色合いに包まれた中で、カーテンがはためいていた。


目が合った沙雪は、大粒の涙を零し、唇を震わせる。


真っ白なベッドで点滴に繋がれ、あたしと樹里は彼女の元へと駆け寄った。



「頑張ったね、さゆ!」


「もう大丈夫だよ。
何も心配しなくて良いんだよ!」


口々に言いながら、あたし達は彼女の手を取った。


本当は、何を言えば良いのかさえわからないけど、でも言葉は勝手に口から洩れる。


さっきと何も変わっていないはずの彼女だけれど、もうそのお腹の中に命はないのだ。