街が西日の色に染まり始める中で、気付けばあたしはシンちゃんのお店に足を運んでいた。


まだ開店前だということもわかっているけど、でも、とてもじゃないけど勉強なんて出来ないし。


裏口に回ってその扉を引いてみると、やっぱり開いていた。



「あぁ、奈々ちゃん久しぶり。」


一番に声を掛けてくれたのはトキくんで、こっちから入ったとしても怒ったりはしない。


すぐにそれを聞いたシンちゃんもやってきて、彼はあからさまに眉を寄せる。



「お前、今まで何やってたんだよ?」


「兄貴は奈々ちゃんが来ても来なくても、どっちみち心配するよね。」


横から口を挟んだトキくんの言葉に、うるせぇんだよ、と彼は返す。


あたしは思わず苦笑いを浮かべてしまった。


どうやらふたりは珍しく、店の掃除をしていたようで、シンちゃんは早々にほうきを投げて煙草を咥える。



「で、どうした?」


「んー、学校で色々とあってさ。」


「何だよ?
苛められたら俺に言えっつってんだろ。」


「そういうんじゃないっての。」


まぁ、相変わらずの過保護っぷりは健在なようだけど。


トキくんは、カウンターに腰を降ろしたあたしに、何も言わずにジュースを差し出してくれる。



「ねぇ、友達って何なのかな?」


「友達は友達だろ。」


「そりゃそうだけど。
でも最近、何かよくわかんなくて。」


だって何も言わないことで仲の良い関係なんて、やっぱり変だ。


でも、あたしだってシンちゃんやトキくんのことを友達だと思ってるけど、ふたりはそうじゃないみたいだし、結局のことろ、そういうのですらわかんない。