「何よ、あれ!」


怒って言ってやるが、沙雪はいつものことだし、と苦笑い。


今更になって樹里の言葉の真実を見た気がして、あたしは悔しさの中で唇を噛み締めた。



「アイツただの気分屋だし、いちいち気にすることないよ。」


勇介曰く、突然いなくなるのは日常だから、とのこと。


それでも到底納得なんて出来るわけもなく、折角の良い気分が台無しだ。


てか、大地くんはありえない、と言ってやりたかったが、それも沙雪の手前、ぐっと言葉を飲み込んだ。



「さゆ、別に全然平気だし。」


平気、と言う時ほど、人はそうではないと思うんだけど。


でも、変に慰めるより、これ以上何も言わない方が良い気がした。



「んじゃあもう、うちらだけで騒ごうよ。」


息を吐き、仕切り直しように言う。


沙雪の顔はその瞬間にぱあっと明るくなり、あたしもほっと安堵した。


勇介は何も言わずに視線を外すが、もしかしたら何か知っているのかも、という疑念を振り払う。


とりあえず今は、聞くべきではないのだろうから。



「ねぇねぇ、それよりふたりってどうなってんの?」


話を変えようとしたらしい彼女は、そんな話題を見繕った。


あたしと勇介は顔を見合わせるが、どうにもなってないので、答えようがない。



「奈々は我が儘だから、勇介くんも苦労するでしょ?」


「ちょっとちょっと!
さゆにだけは言われたくないって。」


「さゆは我が儘じゃないもーん。」


あたし達の口喧嘩を見て、彼はどこか可笑しそうに笑っていた。