「セフレで良いって言ってたって?」
「なんて答えたの?」
気になって聞いていた。
「知りたい?」
「知りたいけどやっぱり聞きたくないっ!」
言い捨てるように言って階段を上がった結衣はバタンと音を立てて部屋に入ってしまった。
玲央は肩をすくめると浴室へ向かった。
「体中にお好み焼きの匂いが付いた・・・・・・」
おいしかったが後からずっと匂うこの匂いは好きではない。
シャワーをたっぷり浴びてさっぱりすると冷蔵庫を開けた。
信也のビールが目に付く。
玲央は缶ビールを手にして冷蔵庫を閉めた。
プルトップを開けると小気味良い音がして泡をのぞかせた。
ゴクッと喉を鳴らして一口飲む。
ダイニングテーブルに寄りかかりその時間を楽しむ。
――日本へ来て徐々にイギリスの生活を思い出さなくなってきた。
その分、気が楽になっていた。
だが、ふと親友の顔を思い出す。
その途端、辛そうな表情になった。
深い溜息を吐いて、缶ビールを一気に飲み干した。
結衣はバスルームに入った。
耳を澄ませていたから玲央が上がった事は分かっている。
「うへっ・・・・・・お好み焼き、好きなんだけど匂いがつくのが嫌なんだよね」
玲央が聞いていたら同じ事を言っていると笑っただろう。
* * * * * *
頭にタオルを巻いてキッチンへ行く。
「喉が渇いた・・・・・・しょっぱかったのかな」
冷蔵庫を開けて麦茶のボトルを取り出すとコップに注ぐ。
渇いた喉に麦茶が入っていく。
――玲央、眠ったかな・・・・・・ママったらメールだけで済ませるんだから。
多恵子のメールは1行だけ。
『今日は帰らない』
「なんつう親なのっ!」
今晩は家に玲央と2人っきり。
急に意識してきて結衣の顔が赤らむ。
「玲央は私の事なんとも思っていないんだもん 意識する事ないよ」
ぶつぶつと呟くとコップを持って2階へ上がった。
部屋に入ってギクッと足を止めた。
「な、なんで玲央が部屋にいるのっ!?」
玲央は結衣の机のイスに座っていた。
「話があるんだ」
真剣な表情に結衣は急に緊張した。
結衣は戸惑いながらベッドの端に座る。
「話ってなあに?」
「あの女のこと、気にするなよ 断ったから」
「き、気にしてなんか・・・・・・いないよ・・・・・・」
「ほんと?」
メガネをかけていない玲央の瞳が妖しく揺れる。
「ほ、ほんと」
玲央が立ち上がって結衣の隣に座る。
そして結衣の手に持っていたコップを取り上げゴクッと一口飲むと小さなテーブルに置いた。
「知らない女なんて気持ち悪いって言っただろう?」
その言葉に面食らう。
「玲央・・・・・・」
「めんどくさいだけ」
「あんなにきれいな子に告白されても嬉しくないの?」
「結衣の方が可愛い」
――どんな顔してそんな事言うかな・・・・・・。
恥ずかしくて顔が見れない。
「結衣、こっち向いて」
あごに手をかけられて結衣は仕方なく玲央の方を向いた。
「結衣がいるのに他の女なんていらない」
玲央の顔が降りてきて結衣はグリーンがかった茶色の瞳を見たまま動けなかった。
ピンク色の唇に玲央の唇が触れた。
「っ・・・ん・・・・・・」
息が出来ず口を開けると深いキスに変わった。
結衣はおずおずとキスを返すと玲央の舌が奔放に口内を動いていく。
頭の中にもやがかかる。
耳鳴りもしてきてベッドの上に押し倒されたのも気づかないほどだ。
額に口づけされ、そしてこめかみから耳に唇が移動する。
「あっ!・・・・・・」
耳朶を甘噛みされて結衣は思わず声が出る。
「耳が感じやすいんだ」
「え?い、いやぁ」
再びじらすように耳を愛撫されて結衣は玲央の下で身体をくねらせた。
耳から首筋にも玲央の唇が触れ結衣の身体はビクッと弾んだ。
チクッと小さな痛み。
「・・・・・・っん、っ、あ・・・・・・」
「可愛い声・・・・・・」
もっと啼かせたいと思う反面、理性が抑えろと言っている。
結衣の肌は胸元までピンク色に染まっている。
「玲央・・・っ・・・・・・」
涙目の結衣が玲央を呼ぶ。
玲央はもう一度唇に優しく口づけすると結衣から離れて隣に寝返りを打った。
結局は理性がいつも勝つのだ。
「れ・・・ぉ・・・・・・?」
結衣が身体を起こし玲央を見た。
片腕を目の上に置いているので表情がわからない。
いきなり止めた玲央に戸惑う。
黙って玲央を見ていると口を開いた。
「2人がいない間に出来るわけないだろ?信用されて留守にしているのに裏切れない」
腕を顔から外し、結衣をじっと見つめる。