瞳を閉じて、沙菜は心の中でそう牡丹にお礼を言う。
………そして、今まであんなに考え込んでいたような暗い顔ではなく、元気な……まるで光を受けて色をつける桜の花びらのような笑顔で、沙菜は口を開く。
「ありがとう、ママ! 私、先輩のとこに行ってくるねっ」
母にそう言い残して、沙菜は迅がいるであろう居間へと走っていく。
―――…弱虫のままじゃ、ダメ。
………ちゃんと、前を向いて、怖がらないで
勇気を出して、自分の気持ちを伝えなきゃ。
……臆病なままじゃ、いくら『好き』っていう気持ちがあっても伝わらないことがあるんだって気付いた。
ちゃんと、言葉にして伝えなきゃいけない事もあるんだね……
私、ちゃんと先輩に『好き』って伝えるから
見守っていてね、牡丹姫。
……心の中でそう思いながら、沙菜は居間までの道のりをゆっくりと歩いていた。
「はぁ……。私もちゃんと、哉匡さんや牡丹姫みたいに自分の気持ちを言えるかな……?」
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