『和平条約は継続のまま、牡丹様の婚約破棄を申し立てに行ったそうです。ですが、その帰りにおそらく柊の間者でしょう。背後からいきなり、斬りかかられた様です』




 医師のその言葉に、牡丹は呆然と立ち尽くし、そして哉匡の寝ている床の傍へ行くと座り込み、彼の手を包み込むようにしてとり、そして自分の頬まで持っていく。


………牡丹の瞳には、自然と涙が浮かんでいた。





「………私のために、」





―――…柊家の屋敷にまで行って、


どうなるか分かっていたはずなのに……、





「平和より私を選んでだなんて、最低なことを言って本当にごめんなさい」




 牡丹のその言葉と同時に涙は頬を伝い、枯れる事を知らないように流れ続ける。




「私が……小柳家の姫として、この平和と哉匡を守ります。………柊家へ嫁ぎます」




―――…哉匡、好き。


大好きよ。



だから………、争いが終わるのならば



たとえ、『道具』として使われるのであれ、



私はこの結婚を受け入れます。これが【運命】というのであれば……



私はこの【運命】を受け入れます。



………だから、どうか神様。



来世では、哉匡と結婚させて?



姿かたちは変わっていたとしても、【魂のかたち】は変わらないから……。



きっと、また出逢えるよね?哉匡……、






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