『!!……ボクは一人……?』

『あぁ、お前を愛する者など一人もいない。』

兵士は滑稽だと笑いながら、牢を後にする。

『……いらない。

こんな世界……いらない!!』

キャルナス様の周りが赤く光り出す。

赤の閃光は死神が出す光。

なんとなくわかった。

キャルナス様が幽閉されたのは、死の能力が備わっていたから。

『ぁぁぁぁぁあああああああ!!』

暴走しだす赤の閃光は牢を貫き通し破壊すると、
さらに直進して、さっきの兵士を粉砕する。

『あはははは!

みんな消えちゃえばいいんだよ、みんな。

みんな消えちゃえば、ボクが一人でもおかしくない。』

キャルナス様は牢の外に出ると、
周りを包囲していた大軍の兵士に閃光を向ける。

(やめて……

キャルナス様……

此れが貴方の深い闇だったんですね。

だったら私は其の記憶を少しでも消してあげなきゃ。)

私はキャルナス様の元に駆け寄ると、
赤の閃光に魔法をぶつけて、相殺させる。

「もうやめて!

キャルナス様……

私は貴方を心から慕い、愛しています。

一人ではありません。」

幼いキャルナス様にしがみ付く。

すぐに振り落とされると思っていたが、
幼いキャルナス様は思ったより小さく、
私の方が全然大きかった。

『お姉ちゃんは誰……?』

キャルナス様が手を止め、閃光を宥めると、兵士たちが一気に襲いかかる。

「来るな!

死にたくなければ、早々に立ち去りなさい。

でなければ、一人ずつ頭蓋を撃ち、殺していきますよ?」

私の言葉は意外にも効いたのか?

兵士たちは一歩下がる。

私はキャルナス様の右手を握る。

「キャルナス様、行きましょう。

私がずっとあなたをお守りします。」

私の顔をじっくり見ると、キャルナス様は首を横に振った。

『ありがとう……
でもそれは無理だよ、めちる。』

え……

キャルナス様は悲しそうに微笑んだ。


『過去は変えられないんだ。』


其の言葉が最後、私は駄菓子店の屋根の上だった。