「何を言ってるんだ?

あんたが万里を殺したのに?

俺は此の眼で見たんだよ! あんたが、あんたが逃げる万里の背を、
躊躇いもなく刺す所を!」






『嫌……来ないで! 私は死ぬわけにはいかないの!

爾来様をお護りしなければ……!』

『……駄目だよ。』

『!!』






「こうしてお前は、万里が何年も努力して、
勝ち取ったNo.2の親王の称号を、一瞬にして奪い去ったんだ!」

止められなかった。

今までぶつけられようの無かった此の想いを。

“仕方が無かったんだ、彼女を殺めたのは。 今に解るよ。”

仕方が……無かった?

“親王の称号が欲しかったわけではないんだ。

支配下に入れれば良かった。

だったらわけなく、
彼女の様な出来た人間を態々、殺めるわけがないだろう?

理由があったんだよ。”

理由だと?

莫迦な……

万里に限って、殺される理由が有る訳がない。

“知りたいだろう真実を?

だから其れを条件で、僕の頼みを聞いて欲しい。”

頼み……?

どうせこいつの頼みなんて禄な事じゃないだろう。

“支配下・定を作って欲しい。”

支配下……じょう?

“どうせ黒無化や、瀬木夏たちは、
爾来の支配下・灯に入るか、
白江様の支配下・蔭に入るか、
迷っているのだろう?

そこで、支配下・定が出てくる。

支配下・定は名の通り、灯と蔭を見定める者。

支配下の総監視班みたいな者だね。

独楽にはその班長になってもらいたい。”

何故だ?

こいつの本質が読めない。

何故そんな面倒くさいものを作る必要があるんだろう?

でも絶好の機会かもしれない。

これでいかに白露が嫌な奴か、皆に証明できる。

「解った。 引き受けようじゃないか。」

“有難う、では検討を祈るよ。”


ピーピー


電話が切れた時、俺はもうこれからどうやって万里の仇をとるか、
其の事ばかり考えていた。