哀歌の序曲――――



『りっくん!』


甲高い声。

でも、綺麗だよ。

お前の何もかもが透き通っていて、美しいんだ。

天使なんて仕事してっから余計解るよ。

お前程、煌びやかな女はいない。

『りっくん、支配下に入れたんだね!』

俺の手を取ると、彼奴はにこやかに笑う。

仄かな赤い髪から、くすぐったい優しい匂いが俺の鼻を包む。

『おう、赤月先輩。』

『うむ、よきにはからいたまぇー! 独楽くん!』

可愛いな……

初めて人をここまで愛しいと想ったんだ。

ずっと一緒にいたいと思ってた。

万里が爾来が好きだって事は知ってた。

歯を食いしばって、二人がカーテン越しで楽しそうに会話をしているのを我慢していたんだ。

隠し通してきたんだぜ?

キャルナスや七瀬にはバレちまったけどさ。


『りっくん!』


何時までも見ていたかった、お前の笑顔。

何時までも聞いていたかった、お前の俺を呼ぶ声。

なのに、なのにな……






『あたしは爾来様をお守りせねばっ……!!』


『……駄目だよ。』


『万里――――!!』






歪ませたんだ、彼奴の笑顔を。


『りっ……く……ん……死に……たく……ない……』


壊したんだ、彼奴の綺麗な声を。

赦せなくなった。

白露 鎖葉斗を。

万里を殺した白露を。






「万里、仇は俺が……」

銀露に濡れたナイフを磨きながら、夜空の君に誓う。