「此処を抜けると、神授村です。」

神授の森の奥の茂みを祓いのけると、其処には人一人がやっと通れるくらいの小さな穴が。

「あぁ、こんな所を通るのかい。」

キャルナスはやだやだと首を横に振る。

穴に飛来が入る、次に美紗、キャルナスと続く。

「わぁ……綺麗……。」

穴を抜けると其処は桃源郷。

夢の楽園だ。

彩りの草花、銀色の蝶。

地に生るクローバーは皆四つ葉だから驚きだ。

桃色の空。

連なる大樹。

大樹の上には木で上手く作られた家が在る。

「此が民家なのですか……」

「えぇ。でももう誰も居なくなってしまった。」

あ、とキャルナスは口を塞ぐ。

「神隠しについて詳しく教えてくれない?」

美紗が聞くと、飛来はか細い声で話し始めた。

「七日前でした。

まだ九つにも満たない男の子が、突然消えてしまいました。

次にはご老人が。

また次にはつい最近、身ごもったばかりだった若い奥さんが。

それから私の父と、数人の方々が探しに、神授の森に出発しました。

然し帰って来ないのです。

明らかにおかしいと思った、私の母様が森に出ると、途端に叫び声が。

残りの村の皆がその方に行くと、ぱったり辺りは静まった。

私は恐る恐る穴を抜け、出てみると、もう誰もいません。

そして森の中を廻っていたら、お二人がいたの。」

ふぅむ、キャルナスは考え込んでいる。

美紗は全くキャルナスの様な知識が無いから、ただ涙を堪える飛来の背中をさする。

「探しましょう。

皆きっといるよ。」

「都……さん……」

「あ、都でいいよ。」

仲を深める二人の少女を置いといて、まだキャルナスは考えていた。

「とりあえず、神授の森をまた探してみましょう。」

飛来の手を取ると、美紗は神授の森に続く穴に向かう。

キャルナスは慌てて二人を追う。