「あれ? 誰かいる?」

美紗が見ると、森の奥に一人の同世代位の少女が立っていた。

黒い日傘を持ち、赤いリボンの付いた淡いピンクのドレスを着ている。

空色の髪は、儚く、触ると一瞬にして壊れてしまいそう。

小麦色の肌は艶が有って、上品な感じがする。

「!! 助けて下さい!」

少女は此方に気づいたのか、助けを求めて駆け寄ってくる。

「貴女は……?」

不審そうにキャルナスは少女を見た。

少女はキャルナスに負けない程に長い睫をパチクリさせる。

「神授の村の人達が、消えてしまったんです!」

「神授の村……?」

なんだろう?

そんな所在るのか?

「確かに在りますよ。

地図に載ってます。神授村。」

キャルナスが見せてきた二万五千分の一地図には、確かに赤い字で、北の方に神授村と書いてあった。

「消えたって?」

「ぱったりと皆消えてしまったんです……

まるで、神隠しの様に。

お父様もお母様も……」

泣き崩れる彼女の背中を美紗はさすってやる。

「貴女の名前は?

私はみ……」

名前を言おうとした美紗の口を、キャルナスは両手で鬱ぐ。

(迂闊に名前を言ってはいけません。)

もう、細かいなぁと思いつつ、美紗は偽名を名乗る。

「私は都(みやこ)

此方がキャリィさん。」

どうも、とキャルナスことキャリィは微笑んだ。

「私は棟橋 飛来(むなばし ひらい)

神授村の村長の娘です。」

飛来は立ち直ると二人に頭を下げた。

「神授村に私達は用があるの。

だからついでといっては何だけど、連れてって貰えるかな?」

美紗こと、都は飛来に笑いかけた。

飛来の緊張感を解す為に、なるべく笑ってあげようと思ったからだ。

だが飛来はツンとした様子で都に吐き捨てる。

「笑わないでください。

村までは案内する、助けても貰いたい。

でも村の消えた皆に失礼極まりないわ。」

さっきと打って変わって豹変した飛来に二人は呆然となる。

神隠しの村に待ち受けるのは、希望か絶望か。