自嘲の笑みを浮かべそうになり、今の状況を思い出す。



「ねぇ、何処に行くのよ」


結構な速度で道なき道を走っているのに、あまりそう感じない。



「妖魔の里」



そう答えたのは、昨日聞いた覚えのある声。



…鬼狼。




殺されるのかな。天狗に繋がる人間として、わざわざ里まで行って。



死ぬのは嫌だな。


怖いよ。


でも、心の何処かに、それでもいいかなぁ、なんて思っている自分が居て。



「…後ろから追って来れないように結界を張ってる」



「ありがとう…」


彼は一瞬驚いたように、あたしを振り向く。



「何で?」



「…分かんないよ。あたしにも」