佐助はあたしに普通に生活していればいい、と言った。


昨日おばあちゃんに聞いた話だと、山科の家は、天狗よりも神山と調和しやすいから、天狗はあたし達を契約者に選ぶんだそうだ。



別に、神山に調和しやすいあたしの…山科の霊力を経由しているだけだから、あたしは何も考えず生活してればいい。




別にそこまでしてあたしに執着しなくても、あたしが死んだらおばあちゃんと契約すれば良い。

それでも駄目なら叔父さんやお父さんと契約すれば良い。



…どうにでもなるじゃない。



しかも、昨日あんなに言い過ぎた。


佐助は負けただけ。ふて腐れていたのはムカつくけど、別に負けたことが悪いんじゃない。




ただ、あたしは純粋に、佐助が傷つくのを見たくなかった。





それだけだ。



「こら山科ァ、寝てんじゃねぇぞ」


英語教師の晴山先生が注意してくる。もちろん別に寝ている訳じゃない。

先生はまた後ろを向いてスペルを書きはじめる。

先生の寂しい頭に、すみません、と小さく言った。