「勝手に帰って勝手に離れて、勝手に死にかけてんじゃねぇよ」



呟きが漏れる。
この馬鹿女。


折角可愛いと思ったのに、この性格は扱いづらい。



自分を見ているようで。



「……おい沙手!お前は天狗の契約者に手を出せるほど、いつから偉くなった!」



長らく燈から離れていたせいか、ところどころが天狗へと戻っていく。


肩甲骨から伸びる漆黒の翼。


作り替えられていく骨格。


何気に痛い。



しかし、戦うのなら天狗の姿の方が都合が良い。



佐助は刀を抜く。


なにもない所から刀は現れる。



特例と言えるほどに強すぎる天狗の力は空間をも繋ぐ。


祖父はそんな力の持ち主だった。



そしてその孫の、自分も。



いとわれることはあったが、今こうやって役に立っている。




白刃が現れ、佐助と妖魔…沙手を映す。



「ぉおおおッ!」
裂帛の気合いとともに走り出す。