上った月は満月、


見上げ、見下ろすのは妖魔の長と天狗の頭領。



「……また俺と戦うつもりかい?天狗の頭領…にしては、容姿は全然違うから、分からなかったけどね」




漆黒の翼で飛翔し、完全に空中に浮遊する天狗は、僅かに人間の顔形をしているのみで、長い指には爪が生え揃い、背中から首筋までを黒い羽毛が侵食している。




「お前も本気のつもりなんだろ?
…妖魔を打っ倒す。燈を帰してもらうぞ」




相対する妖魔の、茶色かった瞳は赤く。

髪は神々しい金紗。

生えそろった牙に、頭から突き出た長い角。
左手は鱗に覆われていた。