遠回りしたけれど、私はなんとか産める場所を確保できた。
大学病院はイメージどおり混んでいて、健診の度かなり長い時間待たされた。
けれども、診察はよくいう3分診療などでは決してなかった。
どの医師の対応も概ね親切で丁寧だった。
「お待たせしてすみませんね。待ち疲れしちゃいますよねぇ」
きっと相当疲れているに違いないのに、いつも穏やかな笑顔で迎えてくれた。
その笑顔に救われ癒され、どれほどの安心をもらったことだろう。
「順調ですね。何か気になること、聞いておきたいこととか、ありますか?」
一通り診察が終わると必ずそうして訊ねてくれた。
「今日は暑いですからねぇ、どうぞ気をつけて帰ってください」
帰るときでさえ、にこやかに声をかけてくれた。
“先生こそ体に気をつけて、これからも、たくさん赤ちゃんとりあげて下さいね”
いつもいつも心の中で、私はそうして頭を下げた。