「ありますよ」
「本当ですか!?」
「豪華な個室でのゴージャス出産などを希望でなければ」
医師は私たちを安心させるように、冗談めかした言い方をして笑ってみせた。
候補として紹介されたのは、とても意外な医療機関だった。
「大学病院、ですか?」
「ええ、そうです」
ああいう病院は、多胎児やハイリスク出産しか受けないものと思い込んでいたのだが。
「普通の妊婦さんも出産されてますよ」
今までに幾度も紹介状を書いていると医師はさらに付け加えた。
「豪華出産とは無縁の大部屋ですし、祝い膳などない普通の病院食ですけどね」
「安全で安心できる病院なら十分です!」