「そんな事ないよ。タクヤ優しいよ?カケルより全然優しいよ。あたしタクヤと付き合っちゃおっかな…」


ついつい口走ってしまったあたしに、タクヤはクスクス笑いだす。


「それならそれで最高だな。リオちゃん可愛いし。いいよって言いたい所だけど…」


“俺なんか止めといたほうがいいよ”


そう付け加えられた言葉にタクヤは低い声で呟いた。


えっ、何?さっきのタクヤの声。壊れそうなくらい低くて、ちょっとビックリした。


それ以降、何も言えなくなったあたしにタクヤさえも口を開く事はなかった。

暫く嫌な沈黙が流れ、今いるこの空気が重く感じる。


でもそれを破ったのは、


「おぅ、タクヤ」


見るからにイカツイ男だった。

半袖のシャツから密かにチラチラと見えるのは墨。その男が近づいてくるによってあたしの身体が反り返っていくのが分かる。


タクヤもイカツイけど、ここまでイカツイ人は初めて見た。


「お前、学校は?」


あたし達の前に腰を下ろした男に、タクヤはそう声を掛ける。

学校は?って、この人、高校生な訳?!見るからに高校生じゃない要素に唖然としてしまう。


「もう1ヵ月くらい行ってねぇよ」

「マジかよ」

「マジ。つーかよ、大事な話があんだけどよ」


そう言ってきた男にタクヤは「あー…」って言葉を濁らせ、一瞬あたしを見た。