ロバート様が、悲しい顔をした

「王位継承権の争いを、スコットランド国内だけで解決しなければいけなかったんだ
エドワード1世が、調停役を買って出た時に、断っていればよかったんだ
もっと言うなら、調停役を名乗り出される前に、王位継承の問題を解決できなかったのがいけないんだ
イングランドがスコットランドの土地を欲しがっているのを知っていたのに…隙を見せてしまった我々、貴族の責任にある
それを今さら、ジョン・ベイリャル一人に責任を押しつけて不満をぶつけるのは間違ってるんだよ」

ロバート様が肩を竦めた

「その話、父から聞いたことがあります
確かブルース家だけが、エドワード1世の調停に反対してたって」

「ああ、そうだ
俺が祖父に言った
祖父も父も、俺の考えに賛成して、まわりの貴族たちに声をかけた…が、聞き入れてもらなかった
王位継承権が奪われると思った貴族の嘆きにしか聞こえなかったらしい」

ロバート様…きっと悔しい思いをしたんでしょうね

「たった半年だ」

「え? 半年?」

「ああ、新国王が誕生してたった半年で、次の国王候補たちの血が騒いでる」

ロバート様が私の手を握ってきた

「嫌な世の中だよな
半年前まで、国王陛下の支援者だった貴族が…今はもう国王の暗殺を企てているんだ
次期国王となるために…視野の狭い人間が、スコットランドを自ら消滅させようとしているんだ
己の欲望を満たすためだけに、多くの人間の命を犠牲にして
俺は…それを見てに見ぬふりはできない
スコットランドの民の血を、無駄に流すなんて許せない」

ロバート様の瞳に涙が溜まっていた

苦しそうな表情をしている

この人は…大きな人だ