「勝てないんですか?」

「ああ、勝てない
イングランド王エドワード1世が生きている限り、スコットランドには勝ち目はない
あいつは頭がいい
あいつの上を行く人間が、今のスコットランドには誰ひとりとしていない
あいつに真っ向から勝負するのは、馬鹿だ
みすみすスコットランドを差し出しているのと同じだ」

そんなあ…どうして?

エドワード1世はもう54歳で…若いとは言えない

ロバート様たちが立ち上がれば…

「今、俺が立ち上がればって思ってるだろ?」

「え? あ、はい」

ロバート様が首を横に振った

「スコットランドの多くの貴族は、きっとジョン・ベイリャルを憎んでいる
どうしてイングランド王の言いなりなのか、と
それは視野の狭い人間の見方だ」

どういう意味?

「ベイリャルの性格に、あいつの妻がエドワード1世の親族だということを考えれば、ベイリャルだけを怨むのはおかしいんだ
少し考えれば、わかるだろ?
ベイリャルがエドワード1世に頭が上がらないって存在だってくらい
言いなりになるってことぐらい
この状況を憎むなら、この状況を生み出す前に対処しておくべきだったんだ」