「一つだけ
俺から言えるのは、ロバートの周囲は敵だらけだ、ってことだ
使用人だって、誰かのスパイと考えるのが妥当だろう」

アンドリューが人差し指をロバートの前で振っていた

「ベイリャルだって同じ環境だろ?
俺より敵が多い」

「間違った情報を流して、将来有望な若者を貶めようとしている馬鹿がいる
ああいう奴は、話術が巧みな上に、陛下も奴を信用しきっている
おかげで俺は、親友の信頼を失いそうになっている
陛下を裏切る覚悟がいつでもできているが、親友は裏切らない……と知ってもらいたいんだが、どうすればいい?」

アンドリューが首を捻って、俺に視線を送ってきた

俺は、下唇を舐めると、鼻から息を噴射して首を横に振った

もう疑ってねえよ

王位継承争いから解放されて、平穏に過ごせていたのは…

たった半年かよ

また人々の裏と表の顔に、振り回されながら過ごしていくかと思うと

面倒くせえなあ

面白いけどな

噂と真実に振り回されて、おろおろする人間たちを見るのは…

「たいした奴だ
話術が巧みなのは、どこの誰だ?
無口で引っ込み思案な俺の師匠にしてやろう」

アンドリューは、まわりを見て他人の気配がないのを確認してから「甥っこだ」と小声で呟いた

国王陛下 ジョン・ベイリャルの妹の子ジョン・カミンか

あいつは俺を陥れようとしている

俺は大きく頷くと、顎に手を当てた

上等じゃん

受けて立ってやろう

俺の勝利で決まっているけど、な