「ロバート、そろそろ戻らないと」

ドアの向こうから、イサンの声が聞こえてきた

「ああ、わかった」

ロバートが返事をすると、赤ん坊を私に渡してくる

「ゆっくりできなくてごめん」

「いえ…」

「戦を控えてるんだ
俺はイングランド側の兵士として戦う
相手は…敵の総大将はアンドリュー・マリーだ」

えっ?

私は目を丸くしたまま、身体が固まってしまった

だって、アンドリュー・マリーって言えば、ロバートの親友じゃないの?

王になるって、親友までも敵にしないといけないの?

「大丈夫だ」

ロバートは私の頬にそっと指をつける

「でも…」

「スコットランドは今、生まれ変わろうとしている
イングランドからの重圧を払いのけて、スコットランドとして歩もうともがいている最中だ」

「なら、どうしてロバートはイングランド側についてるの?」

「それが俺の生きる道だからだ」

「ロバートは王になるんでしょ?」

「ああ、なる
必ず、な
そのためには、今、俺はイングランド側にいなくてはいけないんだ」

「意味が…わからない」

「ゆっくり話したいが…そういう時間もなくてな」

ロバートが苦笑して、肩をすくめた