母の眠る墓前で、俺は立ち尽くしていた

もう誰もいない

城に戻って、ひそやかな食事をしている頃だろう

俺は一人で、母の墓の前に立った

母と過ごした記憶はあまりない

弟や妹と楽しく会話する母の姿を遠目で見ていた

今思えば、羨ましかった

俺は後継者として、幼いうちからブルース家のしきたりを叩きこまれ…祖父や父の傍で勉強してきた

貴族としての振る舞いや、するべき行いを

その裏側では、妹や弟たちの笑い合う声、母の優しい口調が聞こえてきた

どうして俺だけ?

そう思っていた時期もある

母に嫌われているのではないか?

そう考えた時期もあった

だけど、違ったのかもしれない

遠くにいても、よく母と目が合っていた

目が合うと、優しい瞳で微笑んでくれる

あれは母なりの俺への愛情表現だったのだろう