まだ陽の登らない朝に、母の死を耳に入れた

不思議と、悲しみはなかった

どうしてだろうな

夜中に、母の顔を見に行った時は、すごく胸が苦しくて、今にも泣き出しそうになるくらい目が熱くなったのに

母の死を聞いて、母の遺体を目にしても、胸の痛みはなかった

目頭が熱くなることもなかった

葬式では、父が泣き崩れた

俺よりも先にブルース家を背負って立つ男であるのに、弱い部分をさらけ出し

母の墓前で、ぼろぼろだった

少し前の俺なら、父の姿を見て『格好悪い』と思っていただろう

実際に、男が泣き崩れるなど格好悪い

だけど、愛した女性の死を目の前に泣ける男は格好良いと思った

結婚してもう何十年と、経っているのに、変わらずに一人の女性を愛し続けた父を尊敬した