『遼の馬鹿』

これ以上
何も言えない

声を押し殺すだけで
精一杯だった

「姫
大丈夫?」

しばらく経って遼が声を発した

『もともと大丈夫だもん』

強がるあたし
さっきのは夢だったって

そう思いたい

あたしが人前で泣くなんて
あり得ないのに

それも男の腕の中で