ガラガラガラ。
教室のドアが開く音がした。



「お待たせ、遼。」

実沙希が窓際に立っている俺の隣へ来た。


「遅くなってゴメンね。」

「大丈夫。」



走ってきたのか?
少し実沙希の息が上がってる気がした。

風と一緒にふわっと漂うせっけんの匂い。
実沙希が好んでつけてる香水の匂い。
俺の隣にいる実沙希。
こんなに近くにいて緊張するのに、それ以上に俺の心はとても穏やかになる。



窓を覗き込む実沙希。

「外なんか見て、なんかあるの?あー、遼ってば浮気ー?あの桜宮の女の子見てたんでしょー。」


笑いながら冗談まじりに実沙希が言う。
ほっぺたなんかちょっと膨らませ気味にして。