結局、客足が少なくなったのを見計らって買い物に出掛けた。
あの冷蔵庫は無さすぎる。
貧乏だった自分ですら、もう少しマシな中身だったはずだ。
「お米もパンも、主食になるようなものは何も無いなんて…よく生きてこれましたね?」
カノヤが呆れたように言うと、常磐は真剣な表情で首を横に振る。
「いいや。鈴カステラは主食だ。俺はそう信じてる」
「格好良く言ってもダメですからね!?そんな食生活じゃ、栄養偏っちゃいますよυ」
どこかずれている常磐。
カノヤは何だか心配になってきてしまった。
「あまり高いもの買わないでよ。ただでさえ不景気なんだから」
後ろから常磐が釘を刺してきた。
カノヤは苦笑しながら頷いた。
米も輸入した安いものを購入したし、おかずも今日で食べきれそうな量の半額商品。
調理すれば食べられないこともない、鮮度の落ちた安売りの野菜。
こうして食材を選ぶ余裕があるだけ、まだ良いものだとカノヤは思う。
自分の後ろで鈴カステラを食べている男にも、本当の主食を食べてもらいたいと考えるが、果たしてどうなんだろうか、と思ってしまう。
栄養バランスを考えた食事を作りたいと、カノヤは食材を籠に放った。