「とっつぁん!」
振り向いたカノヤが、パアッと顔を輝かせた。
──そう言えばコイツは…強盗事件の時の…
浩也は曖昧な記憶の糸を手繰り寄せる。
確か、通称庶民代表・松金常磐だったか……
「街のピンチは庶民のピンチ。つーわけだ、庶民代表のこの俺が、一つ手を貸してやろう」
「随分上から目線なんスね…」
コイツもどこかウチの上司と似たり寄ったりだな、と浩也は思う。
それでも、人出は多い方が良いだろう。
何より、何だかんだで常磐の実力は知っている。
今回は頼るしか無さそうだ。
「北国の白いプリンとやらが原因らしいんです。何とか取り寄せることが出来れば良いんですが……」
カノヤは状況を説明する。流石真面目な従業員だ、場慣れしている。
「取り寄せるのは難しいんス。何しろ通販で仕入れてるんで、二、三日掛かるんスよ」
浩也も一緒に説明する。半ば縋るような口調であったが、当の本人は気付いてない。
常磐は頷きながら聞いていたが、やがてピンと来たように人差し指を立てた。
「オイ、三席」
「はい?」
「プリンのカップ、まだゴミに出してないよな?」
「………まぁ…ソウデスケド」
浩也が答えると、常磐は口角を吊り上げた。