尚輝は一瞬詰まらなそうに眉を寄せたが、やがて不適に微笑んだ。
「おや、又傘隊長。今日はおサボリではないんですか?」
「たった今巡回から帰ったんじゃい。何の騒ぎさ? こりゃあ…」
麗雨は尚輝に尋ねる。
二人はまだ組み合ったままだ。
「俺は今虫の居所が悪いんだよ。今日の朝楽しみにしていた『北国の白いプリン』が冷蔵庫から無くなっていてね。
犯人は未だに不明なんだけど、何せ楽しみにしていたんだ。今俺は相当怒ってるよ」
尚輝は剣を握る手に力を込め、麗雨を押し返す。
彼女は何やら考え込む素振りを見せてから、鉄パイプで剣を振り払った。
「すまん、『北国の白いプリン』を食べたのはわしじゃ」
「ェエェェΣΣ!?」
カノヤは目を飛び出させた。
尚輝を怒らせた張本人が目の前に……しかも、市民が襲われそうになった原因も彼女ということだ。
尚輝は暫く呆けていたが、やがて表情を険しくさせ、麗雨に飛び掛かった。
「お前かァァァァァ!!!!」
涼しい外見には似合わない、雄叫びを上げながら。