尚輝は腰に刺さった二本の剣に手を掛けた。


「この人数なら瞬きしてる間に終わるよ。彼らは我らが国王に逆らった。反乱分子は危険因子だ……。これは国王の意志だよ」

「待ってくだ……」


浩也が言い終わる前に、尚輝は愛護の隊舎の窓から飛び出した。

風のように速いそれを止める術は最早、浩也には無かった。


「我等に逆らった罪人達よ…俺が神の元に送り届けてあげるよ」


カノヤは物凄い速さで近付いてきたそれの言葉を、木々の騒めきのように聞いた。


「…ヤバイ……皆逃げて…!」


カノヤが叫んだその先、白い刄が振り下ろされるのを見た。


「やめろォォォォ!!」


力一杯叫ぶ。

空気が震えた気がした。



────ガッ!!



「………?」


穹人達は何が起きたのかわからず、ただ茫然と立ち尽くしていた。

その時、人込みに紛れて少女の声がした。


「…車山副隊長……わしらが市民に手を上げるのは、攻撃されて止むを得ないと判断された場合のみ…忘れたわけじゃねーよな?」


そこに立っていたのは、二本の刃を受けとめる麗雨の姿だった。