カノヤは正直戸惑いを隠せなかったが、世の中にはこういったヒトも居るのかと感心していた。
実は、偽民の背中には羽のように対になった痣が出来る。
それを見つけられてしまうと、完全に差別されてしまうのだ。
まして、先程自分から偽民であることをバラしている。
それでも、常磐は普通に接してくれてるし、職まで与えてくれた。
「あ、駄菓子屋だからさ。儲けは地味だから」
とは言っていたが。
カノヤはこの間の抜けた男に、可能な限り付いていきたいと思った。
取り敢えず小腹が空いたので、何か食べるものはないかと冷蔵庫を開けた。
しかし、中には大量の鈴カステラが入っているだけで、それ以外は飲み物どころか、マヨネーズすら見当たらず、カノヤは目を丸くした。
「あの、常磐さん」
「とっつぁんな」
「とっつぁん」
「何?」
ようやく返事をしてもらったところで、カノヤは尋ねた。
「あの、何か食べるものとか無いんですか?」
「目の前にあるだろ」
「いや、お菓子じゃなくて…主食っぽい物が……」
「だからそれ」
「……はい?」
困惑するカノヤに、常磐は当たり前のように言い放った。
「鈴カステラは主食だからな」
「絶対違うよォオΣΣ!!」
カノヤは思わずツッコミを入れていた。