浩也はうなだれながら、隣に立つ男を見上げた。


「車山副隊長、俺交渉の才能はからっきしッスよ……」


男──…車山尚輝(クルヤマ ナオキ)は、ふっと笑った。


「おや、情けないね。余計向こうの士気が上がってしまったようだよ。君には戦いを鎮めるより、盛り上げる方が向いているようだね」

「そうは言われても、向こうは人質も居るんスよ。このままじゃヤバイでしょ…」


浩也は溜息を吐いた。

尚輝は拡声器を彼から取り上げると、クスクスと笑った。


「確かに、このままだといけないねェ…俺もこの状況は好かないよ。血生臭いのは戦争だけで十分さ。たかが住民のデモくらいで、我々の戦力が削られるのは頂けない」


尚輝の瞳は不気味に輝いていた。





「言葉で黙らせられないのなら、力で物を言わせるまでだよ。先代がそうしたようにね」


浩也は何も言えなかった。

ただ、今の彼に逆らったら最後、二度とこの地面に足を付ける日はないと言うことだ。